親知らずの抜歯を検討するなかで、歯科医院選びに悩む人も少なくないはずです。できるなら、安心できる歯科医院で抜歯したいのが正直なところですよね。そこで今回は、親知らずの抜歯で生じるリスクを踏まえ、どのような特徴の歯科医院で親知らずの治療を受けたらいいのかについて当院の受けた取材内容をご紹介します。
親知らずとは
親知らずとは、どの歯のことを指すのでしょうか?
鈴木美穂院長
親知らずは「第3大臼歯」や「智歯」とも呼ばれており、前歯から数えて8本目の歯のことを指します。一般的には、18~20歳頃に生えてくるのですが、最後に生えてくるため十分なスペースがなく、綺麗にまっすぐ生えるケースは少ないですね。骨の中に埋もれたままだったり、斜めに生えたりすることがあります。
親知らずがある場合、抜歯した方がいいのでしょうか?
鈴木美穂院長
一概にそうとは言い切れず、抜歯した方がいいケースと、しなくてもいいケースにわけられます。親知らずが正常に生えており、とくに痛みや腫れなどがない場合や奥歯が抜けている場合などは、抜歯しなくてもいいケースとなります。
抜歯した方がいいケースについてはいかがでしょうか?
鈴木美穂院長
むし歯や歯周病などがある場合や歯並びへの影響が考えられる場合には、抜歯した方がいいでしょう。一番奥にある親知らずは歯磨きがしにくく、汚れを落としにくくなっています。そのため、ほかの歯と比べてむし歯や歯周病になりやすく、痛みや腫れが出たり、周囲の歯に悪影響を及ぼしたりすることもあります。ほかにも、親知らずは横向きに生えることが多く、歯並びに影響することもあります。親知らずによって、これらの悪影響が懸念される場合には抜歯を推奨しています。
なるほど。抜歯した方がいい人の特徴などはありますか?
鈴木美穂院長
産後の女性の場合、ホルモンバランスの変化などで口内環境が悪化しやすく、親知らずによる影響でむし歯や歯周病を発症するリスクがあります。妊娠前に親知らずを抜歯しておくことで妊娠中の歯科治療を避けることができ、産後の口内環境悪化を予防することにもつながります。また、高齢者や基礎疾患がある人の場合には、全身状態を考慮して抜歯の可否について検討することもあります。感染によって病態が悪化することも懸念されるため、医科歯科連携で抜歯をおこないます。
親知らず抜歯の合併症
親知らずの抜歯後、痛みが出たり腫れたりすることはあるのでしょうか?
鈴木美穂院長
症例によります。上顎の親知らずや綺麗に生えている親知らずを抜歯する場合は、痛みや腫れが少ない傾向にあります。一方で、親知らずが埋まっていたり横に生えていたりなどの難しい症例では、歯ぐきを切開したり骨を削ったりすることがあるため、腫れや痛みが生じることもあります。その場合は、鎮痛薬や抗菌薬を処方して症状のコントロールを図ります。なお、腫れや痛みは、数日のうちに軽減するでしょう。
ほかにも知っておいた方がいいことはありますか?
鈴木美穂院長
下顎の親知らずを抜歯する場合、位置によっては下顎を通る神経を傷つけてしまい、感覚麻痺が下唇に残る可能性があります。感覚麻痺を生じることが懸念される場合には、治療前にCT検査などで親知らずと神経の位置関係を把握して、抜歯後に感覚麻痺が生じるリスクなども十分に説明させていただきます。
上顎の親知らずを抜歯する際に生じるリスクはありますか?
鈴木美穂院長
蓄膿症を発症する恐れがあるほか、口の中の水が鼻に入ってしまったり、鼻血が出てしまったりすることがあります。上顎の親知らずを抜歯する際に生じる合併症リスクに関しても、抜歯前にCT検査などをおこない、リスクが生じる可能性などについて十分に説明したうえで、抜歯を検討します。
親知らずの抜歯では、様々なリスクが生じ得るのですね。
鈴木美穂院長
そうですね。しかし、上述した合併症リスクは、適切な検査と十分な技術によって軽減させることができます。親知らずの抜歯をする際の歯科医院選びのポイントとしては、「設備・技術・信頼」の3つが担保されていることが大切だと考えます。
抜歯するクリニックの選び方
どこのクリニックで親知らずの治療を受けても一緒というわけではないのですか?
鈴木美穂院長
そうとは言い切れません。親知らずを抜歯する際には、先述した合併症以外にも感染症などのリスクもあります。そのため、万が一に備えて、検査機器や滅菌機器などの設備が整えられているクリニックを選ぶことが重要です。しかし、これらの項目を患者さんが判断するのは難しいかもしれません。そのため、知人からの口コミや紹介なども参考にして、信頼できる医師を見つけてほしいと思います。
もちろん、歯科医師の技術にも差がありますよね??
鈴木美穂院長
はい。抜歯は外科手術であるため、脳神経外科や心臓外科などと同様に手技の良し悪しはあるでしょう。とくに、難しい症例であればあるほど、その差が出る印象です。
親知らずの抜歯をする際の歯科医院選びのポイントについて、もう少し詳しく教えてください。
鈴木美穂院長
先述したように、親知らずの合併症や感染リスクなどを予防するために最新の設備が整えられているクリニックを選ぶことが大切です。また、親知らずは抜歯したら終わりではなく、抜歯後の経過観察や抜糸などの処置も必要になります。そのため、抜歯に特化した口腔外科の医師が常勤で在籍しているほか、主治医が不在だった際の対応を鑑み、常時2人以上の歯科医師が在籍しているかという点も確認しておくのが理想的です。ほかにも、万が一のリスクに備え、提携している総合病院があるかどうかも把握しておきたいところです。合併症が生じてしまった場合や夜間に不調をきたした場合などにも医科連携で対応してくれるクリニックだと、なお信頼できますよね。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
鈴木美穂院長
はじめての親知らずの抜歯で不安な人や過去に親知らずを抜歯したことがあって恐怖心が拭えない人に対して、当院ではリラックスして抜歯をおこなえる「静脈内鎮静法」も取り入れています。親知らずを抜歯する歯科医院を選ぶ際には、設備や常勤の口腔外科医が在籍しているかということに加えて、抜歯時の配慮がなされているかという点も確認しておくと信頼できるでしょうし、安心して治療に臨めるのではないでしょうか。
まとめ
親知らずの抜歯では、様々な合併症を生じるリスクがあるので、合併症予防への取り組みや抜歯に対して恐怖心があるという人への配慮の有無も、歯科医院選びにおいて重要なポイントです。また、どんな設備があるか、在籍の歯科医師の情報、提携病院の有無なども踏まえたうえで、歯科医院を選んでみてはいかがでしょうか。