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有病者への歯科治療とは

2026.08.03

矯正コラム

歯科医院に来院される患者様の中には、高血圧症・透析患者様・血液疾患など既往歴のある方もいらっしゃり、安全性を最優先した歯科治療が必要となります。
今回は歯科で行っている対応について、具体的な疾患を絞ってご案内します。

【高血圧症】

来院される高血圧症の患者様のほとんどが薬による治療を受けている報告があります。
高血圧症とは、血圧が正常値を超えて高い状態が続いている場合が当てはまります。診療室血圧と家庭血圧とそれぞれ測定値がもうけられていますが、120/80mmHgをこえるようでしたら、高血圧対策として生活習慣などの見直しが必要になります。数値は年々改定されております。
高血圧治療薬の種類には、血管を拡張する薬・血液量を減らす薬・自律神経を沈める薬があります。それぞれの服薬がある患者様は歯科医院来院の際にお薬手帳を持参していただきお伝えください。

●高血圧症患者様への歯科診療・治療時の対応

①体位

血管を拡張するACE阻害薬を服用中の患者様は「むせ」やすいため注意が必要です。治療時のお水の吸引はもちろん大切ですが、ファーラー位という上半身を約45度くらい傾けた角度で治療を行います。むせやすさは舌の筋肉の低下も考えられるためMFT(筋機能療法)が効果的な場合もあります。

②歯肉増殖

血管を拡張するカルシウム拮抗薬を服用中の患者様には、副作用として歯肉が増殖する方がいます。重症の場合は歯が歯茎に埋もれてしまったり移動してしまうことがあります。この場合は服薬の中止をすればおさまりますので、検討を行います。また歯垢が多いと重症化しやすいので定期的な歯科健診を勧めたりデンタルケアの指導も行います。歯肉切除等により、口腔ケアをしやすくすることも重要です。

③局所麻酔薬を使用するときの対応

歯科治療時に使用する麻酔薬の中に含まれるアドレナリンにより、高血圧症の人に影響を及ぼすことがあります。血圧コントロールができていれば問題ないことが多いですが、服薬中であっても血圧コントロールが不良の人には血圧を上げてしまうことがあります。そのために高血圧症の患者様はかならずお薬手帳と血圧コントロールについてお伝えいただき、高血圧症の患者様にも安心して使える麻酔薬の検討をさせていただきます。麻酔による中毒やアナキラフィシーなどにもすぐに対応できる設備とスタッフが重要です。

④内因性アドレナリン

麻酔薬に含まれているアドレナリンよりも、不安や痛みによって患者様の体内に生じる内因性アドレナリンに対する注意は重要です。私たちの体はストレスを感じるとアドレナリンが分泌されて血圧の上昇や心拍数の増加、発汗などが促進されます。歯科診療時には深呼吸をしていただいたり、声かけをして可能な限り患者様にリラックスしていただけるようにしています。歯科治療は、心因性のショックや過換気症候群なども起こりやすく迅速な対応が必要です。

【透析患者(慢性腎臓病)】

慢性腎臓病とは、血液中の老廃物をろ過し尿として排出する等を担う腎臓の機能が低下した病態です。進行して腎臓が働かなくなった場合は透析療法など腎臓のかわりをする治療が必要となります。透析患者様への対応をお伝えします。
慢性腎臓病治療薬には、老廃物を身体から排出する機能を助ける薬・血液をつくる機能を助けて貧血を防ぐ薬・骨やミネラルの代謝を調整する薬があります。歯科医院に来院の際は必ずお薬手帳をご持参ください。

●慢性腎臓病患者様への歯科診療・治療時の対応

①非透析日に歯科治療を実施

透析後は疲労感が強いと考え、透析日と歯科診療日は別日にご案内します。また1回の歯科治療時間が長いと疲労がでやすいため、当日の体調などを確認し、治療中も顔色や体調を観察しながら行います。

②血圧測定時のシャントの位置確認

シャントは血液透析の際にとても大切な部位となるため、歯科治療前後に血圧を測定する場合は、シャント側の腕を避けて測定します。

③口腔内乾燥や歯周病の予防

透析患者様の多くは1日の水分摂取量に制限があり、口腔内が乾燥しやすいです。口腔内乾燥がある場合には保湿剤の使用や薬用マウスウォッシュによるうがいなどを勧めます。また、慢性腎臓病の患者様は歯周病が多いことがわかっており、口腔内管理や口腔ケア指導を行います。

【血液疾患】

血液疾患は、血液成分である白血球や赤血球、血小板、凝固因子などの細胞の数や機能、血液をつくる造血器官に異常が起こることで発症します。血液疾患には原因により異なる病気がありますが、歯科診療時に注意が必要な血液疾患についてお話しします。
血液疾患で私たちが注視をしている主な疾患は貧血・血友病・血小板減少症・白血病です。
まず貧血では、赤血球が酸素を運ぶために必要なヘム(鉄)が不足し酸素不足に陥る「鉄欠乏性貧血」と、ビタミンB12、葉酸が欠乏をすることで細胞に異常が生じる「巨赤芽球性貧血」があります。また巨赤芽球性貧血のなかでも自己免疫疾患によるビタミンB12欠乏が原因となるものを悪性貧血といいます。
血友病は、染色体の異常により、血液凝固因子が欠乏して血がとまりにくくなる遺伝性の病気です。全身のあらゆる組織から出血しやすくなるためケガなどに注意が必要です。
免疫性血小板減少症は、止血作用をもつ血小板を体が敵と認識してしまい破壊、減少させる病気です。血小板が減ると血がとまりにくくなり、内出血の斑点が皮膚にみられます。口腔内に斑点が広がる、わずかな刺激で歯肉から出血する他に自然出血もみられ、歯科治療時に発見されることもあります。
最後に白血病ですが、これは血液のがんです。血液のもととなる細胞ががん細胞に変化し、骨髄や血液内で増加することにより、正常な赤血球、白血球、血小板がつくられにくくなります。このため貧血症状か現われたり、免疫力が低下し感染しやすくなります。自覚症状として皮下出血や鼻出血、歯肉出血などの出血症状があります。

●血液疾患患者様への歯科診療・治療時の対応

①貧血の対応

歯科治療中にめまいやふらつきなどの貧血症状が現われた場合は、医院内で休ませ、体調が回復したことを確認させてから帰宅していただきます。また貧血時に平滑舌やハンター舌炎などの症状がでていないか、歯科診療時に舌の状態も確認し貧血に気づけるように注視しています。また、鉄欠乏性貧血で鉄剤を服用することで、一時的に舌や歯が黒くなることもありますが、治療が終了すれば徐々に改善します。

②血友病・免疫性血小板減少症・白血病

血がとまりにくい血液疾患の患者様に対しては、出血を伴うスケーリングやスケーリングルートプレーニングを含む観血的処置に特に注意をしています。抜歯後は止血スポンジを埋め込んで縫合するなどをして慎重に止血をおこないますが、帰宅後に再出血が起こる場合もあるためその際はすぐにご連絡ください。必要があればかかりつけ医を受診するようにすすめます。
血友病の患者様には血液製剤の補充療法の内容、ピロリ菌の除菌療法中の免疫性血小板減少症患者様には抗菌薬の処方内容、白血病患者様には治療薬や放射線療法の内容を確認させていただきます。白血病患者様で注意が必要となるのは感染のしやすさ、出血傾向、口内炎などです。また抗菌薬や鎮痛薬の使い方にも注意をしていきます。

吉祥寺矯正歯科クリニックには有病者歯科医療学会の指導医・専門医が常勤しており、外科的侵襲の少ない迅速な抜歯やインプラント治療が可能となっております。(吉祥寺インプラントクリニック)
全身疾患をお持ちの患者様にも安心して歯科医院を通院していただくために、スタッフ一同連携して対応していきます。ご心配ごとがある患者様は、お気軽にご相談ください。

鈴木美穂

この記事を書いた人

吉祥寺矯正歯科クリニック 院長

鈴木 美穂

日本歯科大学 生命歯学部卒業。日本歯科大学附属病院 歯科医師臨床研修においてポートフォリオ賞を受賞。
日本歯科大学矯正歯科 勤務後、広瀬矯正歯科に副院長(最終役職)として勤務。2021年より矯正歯科治療専門の吉祥寺矯正歯科クリニックを開業。
日本矯正歯科学会 認定医 取得。日本大学大学院 歯学研究科 博士課程 修了 博士(歯学)。

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