歯科医院にはさまざまな患者様がいらっしゃいます。疾患をお持ちの患者様に対し、歯科で行っている対応についてご案内します。
【心疾患】
心疾患は心臓や血管に何らかの障害が起こることで、心臓の機能が働かず、血液の流れが悪くなる病気です。がんに続いて日本人の死因第2位です。
心疾患とは心筋梗塞・狭心症(虚血性心疾患)や不整脈、心臓弁膜症、心筋症などの総称です。人は血液から酸素や栄養を取り入れています。心臓は血液を全身に送り出すポンプの役割をし、血管はその通り道です。心疾患により心臓に負担がかかり続けると、心臓の機能が低下して心不全を起こします。
心疾患の治療は病気によってことなります。手術や薬による治療やカテーテル治療など様々です。不整脈ではペースメーカを埋め込む手術を行うことがあります。
●心疾患患者様への歯科治療・治療時の対応
①感染性心内膜炎の予防
血液中に侵入した細菌が心臓の弁や内側の膜に感染すると弁が破壊されて感染性心内膜炎になります。死亡率が高く注意が必要です。特に心臓弁膜症で人工弁の手術を受けている患者・過去に感染性心内膜炎の既往がある患者・重度の先天性心疾患に罹患している患者はこの病気になりやすいので注意が必要です。
このような高リスク心疾患患者に対しての出血を伴う治療(抜歯・スケーリング等)場合は、事前に抗菌薬を服用してもらい、感染を未然に防ぐことを目的とする「予防的抗菌薬投与」が推奨されます。
また、歯科治療前に洗口液によるうがいも行い、治療前の口腔内を清潔に保つことも大切です。
②服薬の確認
歯科治療で投与頻度の高い薬のなかには心疾患患者様へ慎重に投与が求められるものがあります。
局所麻酔薬・抗菌薬・鎮痛薬を患者様に投与する際はより安全な薬剤を選ぶ必要があります。そのため初診時や治療前には既往歴のお伝えと、お薬手帳をかならずご持参ください。
③ペースメーカ装着患者様への対応
高周波の電気メスの使用によりペースメーカの誤作動を起こしてしまうことがあります。事前の問診時に必ずペースメーカの有無をお伝えください。
③緊急時の対応
歯科治療中に激しい胸痛発作などを起こした場合は直ちに救急車を要請します。またAEDを設置している場合は装着をしたり、BLSを行います。
【脳梗塞】
脳の血管が詰まることでさまざまな症状をきたす病気です。血液が届かなくなった部分の脳神経が傷害されると、片麻痺や嚥下障害などの後遺症が出現することがあります。後遺症のある患者様や、再発予防のための服薬のある患者様は特に注意して歯科治療を行います。
●脳梗塞患者様への歯科診療・治療時の対応
①嚥下障害のある患者様への対応
脳梗塞の後遺症による嚥下障害のある患者様には歯科チェアの角度に気を付けます。歯科チェアを倒しすぎると誤嚥を引き起こしやすくなるため注意が必要です。少し歯科チェアを通常よりも起こした状態で治療を行います。
②片麻痺のある患者様の口腔ケア指導
脳梗塞の後遺症により片麻痺があると歯磨きが困難になることがあります。そのために定期的な歯科受診をおすすめし、口腔衛生の向上を行っていきます。また、誤嚥の心配のない患者様には洗口液によるうがいなどのセルフケア指導も行います。
③服薬の確認
歯科治療で投与頻度の高い薬のなかには心疾患患者様へ慎重に投与が求められるものがあります。抗菌薬・鎮痛薬・抗真菌薬を患者様に投与する際はより安全な薬剤を選ぶ必要があります。そのため初診時や治療前には既往歴をお伝えいただき、お薬手帳を必ずご提示ください。
【骨粗鬆症】
骨の代謝が悪くなることで骨密度や骨質が低下して、骨が弱くなり、骨折の危険性が高まる病気です。女性に多い疾患ですが、年齢とともに男女問わず患者数が増えていきます。
また、骨粗鬆症の治療は服薬が中心です。その中でも骨吸収を抑える薬を経口投与や注射投与中の患者様には注意が必要です。
●骨粗鬆症患者様への歯科治療・治療時の対応
①骨粗鬆症治療薬による顎骨壊死
ビスホスフォネート製剤・抗RANKL抗体製剤・抗スクレロスチン抗体製剤で治療している患者様が抜歯やインプラント埋入、歯周炎や根尖病巣などで骨髄炎を起こすことにより、顎骨壊死が生じてしまうリスクが高くなります。特にビスホスフォネート製剤は骨に蓄積される特徴があるためより注意が必要です。
このため歯科医師と主治医との連携が必要です。患者様のなかには自己判断で歯科治療前に服薬を中断してしまう人がいますが、医師に無断で中断することは危険が伴います。
患者様は服薬の中断を自己判断で行わず、かならず服薬状況を歯科医師に伝えてください。
②注射薬による骨粗鬆症の治療
注射薬の投与についてはお薬手帳だけでは把握ができないことがあります。もしも注射投与を病院で行っていたり、さらにテリパラチド酢酸塩・テリパラチド(遺伝子組み換え)・抗RANKL抗体製剤といった注射を受けていましたら事前に歯科医師にお伝えください。
③口腔内の衛生状態の確認
顎骨壊死のリスクがある薬で骨粗鬆症治療をしている場合、骨の炎症を防ぐために、歯周病や義歯不適合による歯肉の炎症や義歯性潰瘍への注意が必要です。口腔内の衛生を保つためにセルフケア指導や定期的な歯科医院でのチェックを行います。
このように、全身疾患をお持ちの患者様にも安心して歯科医院を通院していただくために、スタッフ一同連携して対応しております。ご不安ごとがありましたらお気軽にお問い合わせください。
Business Plus 2026年9月号にインタビュー記事が掲載されました。
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