若者を中心にマウスピース型装置での歯の矯正治療が広がっていますが、治療が失敗したなどとして矯正歯科専門医への相談が急増していることが、日本臨床矯正歯科医会の調査で分かりました。
日本矯正歯科学会、米国矯正歯科学会、新聞などでマウスピース矯正や低価格マウスピース矯正などの被害などが多く散見されるようになってきました。
矯正専門の研修などを大学病院や専門施設で研鑽を積まなくても治療ができてしまうマウスピース矯正。 装着しても目立たないマウスピース型装置での矯正は2000年代から本格化し、一般の歯科医による治療も増えてます。しかしながら、治療に納得がいかないなど相談は大幅増加しているそうです。
矯正学会の会員の専門医167人から回答を得た調査では、この装置による治療を55%が実施していることがわかりました。しかし、ワイヤーで動かす従来の治療などを併用せず、マウスピースのみで治療が完了すると考える会員はわずか2%にしかすぎず、治療の低評価は52%に上りました。ワイヤー矯正でも歯の移動は難しいのですから、マウスピースだけで簡単に動かせるはずがないのは専門医はみな知っているということですね。 昭和大学歯学部長の槙宏太郎教授は、「アジア人の多くが矯正で歯を抜く必要があるが、マウスピース型装置だけでは抜歯が必要な人の治療はかなり難しい。マウスピース型装置での矯正を考える場合は専門医に相談してほしい。」と話しています。マウスピース矯正をアメリカから日本に広めた第一人者の先生の、大切な警鐘であると強く感じております。
矯正治療で歯を動かす移動には、歯体移動・傾斜移動があります。お口の中から見えている歯だけを動かし根っこの部分は動かさない傾けているだけの移動を傾斜移動といいます。我々矯正の専門医は、何年もの期間をかけて、歯を根っこごと動かし、骨の中でまっすぐにする歯体移動を行う技術の研鑽を行っています。
また、安易に歯を並べるだけでは、歯並びが戻ってしまうなど予後が悪いことも多く、長期的な予後のため診査、診断から慎重に細かく分析し治療方法を考えます。
宅配便大手のヤマト運輸は5月18日、ヤマトグループの国内ネットワーク上に設置した3Dプリンターを活用した歯科矯正用マウスピースの製造、配送サービスを開始しました。
近年さまざな選択肢が増えている矯正歯科治療ですが、10年、20年先の予後や未来を意識した治療を、提案し実行できることが大切だと痛感しております。
参考文献:小森成「マウスピース型矯正装置の歩みと今日的対応」2021年12月
参考文献:槇宏太郎「どのような時にマウスピース型矯正装置を適用すべきか?」2015年8月